電子カルテに関する3原則【保存性】

診療録の電子化に関する3つの要件、【真正性】、【見読性】、【保存性】とは、H29年5月に出された厚生労働省通知「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」により定められたものです。この基準は、電子カルテ仕様の大原則になります。

今回は、「保存性」についてまとめました。

保存性とは

保存性とは、記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう。

保存性を脅かす原因とは

大きく分けて5つあります。

(1)ウイルスや不適切なソフトウェア等による情報の破壊及び混同等

(2)不適切な保管・取扱いによる情報の滅失、破壊

(3)記録媒体、設備の劣化による情報の読み取り不能又は不完全な読み取り

(4)媒体・機器・ソフトウェアの不整合による情報の復元不能

(5)障害等によるデータ保存時の不整合

これらの脅威をなくすために、それぞれの原因に対する技術面及び運用面での各種対策を施す必要がある。

保存性を脅かす原因を除去

(1)ウイルスや不適切なソフトウェア等による情報の破壊及び混同等
ウイルス又はバグ等によるソフトウェアの不適切な動作により、電子的に保存された診療録等の情報が破壊されるおそれがある。このため、これらの情報にアクセスするウイルス等の不適切なソフトウェアが動作することを防止しなければならない。

(2)不適切な保管・取扱いによる情報の滅失、破壊
使用する記録媒体や記録機器の環境条件を把握し、電子的な情報を保存している媒体や機器が置かれているサーバ室等の温度、湿度等の環境を適切に保持する必要がある。また、サーバ室等への入室は、許可された者以外が行うことができないような対策を施す必要がある。
また、万一、滅失であるか改ざん又は破壊であるかを問わず、情報が失われるような場合に備えて、定期的に診療録等の情報のバックアップを作成し、そのバックアップを履歴とともに管理し、復元できる仕組みを備える必要がある。この際に、バックアップから情報を復元する際の手順と、復元した情報を診療に用い、保存義務を満たす情報とする際の手順を明確にしておくことが望ましい。

(3)記録媒体、設備の劣化による情報の読み取り不能又は不完全な読み取り
記録媒体、記録機器の劣化による読み取り不能又は不完全な読み取りにより、電子的に保存されている診療録等の情報が滅失してしまうか、破壊されてしまうことがある。これを防止するために、記録媒体や記録機器の劣化特性を考慮して、劣化が起こる前に新たな記録媒体や記録機器に複写する必要がある。

(4)媒体・機器・ソフトウェアの不整合による情報の復元不能
媒体・機器・ソフトウェアの不整合により、電子的に保存されている診療録等の情報が復元できなくなることがある。具体的には、システム移行時にマスタデータベース、インデックスデータベースに不整合が生じること、機器・媒体の互換性がないことにより情報の復元が不完全となる若しくは読み取りができなくなること等である。

(5) 障害等によるデータ保存時の不整合
ネットワークを通じて外部に保存する場合、診療録等を転送している途中にシステムが停止したり、ネットワークに障害が発生したりして正しいデータが外部の委託先に保存されないことも起こり得る。その際は、再度、外部保存を委託する医療機関等からデータを転送する必要が生じる。

 

 

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版より

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