入院診療計画書の法律・要件などをまとめてみた。

入院診療計画書はいつから始まった?

平成8年診療報酬改定で、入院料の一部として入院治療計画加算が新設されたときに、患者に対して説明・交付する文書としてその様式が定められました。

現在は、患者の入院後7日以内の入院診療計画の作成および交付は入院料算定の基本要件となっている。

入院診療計画書とは?

法的要因や施設基準に沿って、関係職種(チーム医療)が共同して総合的な診療計画を作成し、早期退院への取り組み体制の充実とその計画を患者に対して文書で説明することを目的に作成が義務づけられた。

チーム医療を前提に、各職種により共同で診療計画が作成されていることが求められている。

入院早期に患者・家族に病名や診療計画が説明されることから、診断名が確定していない場合があり、その際は、最も可能性の高い診断名を記載する。

説明に用い患者に交付した文書は、その写しを診療録に添付することが義務づけられている。

医療法による入院診療計画書の要件
第6条の4

病院又は診療所の管理者は、患者を入院させたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該患者の診療を担当する医師又は歯科医師により、次に掲げる事項を記載した書面の作成並びに当該患者又はその家族への交付及びその適切な説明が行われるようにしなければならない。ただし、患者が短期間で退院することが見込まれる場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

 

.患者の氏名、生年月日及び性別
二.当該患者の診療を主として担当する医師又は歯科医師の氏名
三.入院の原因となった傷病名及び主要な症状
四.入院中に行われる検査、手術、投薬その他の治療(入院中の看護及び栄養管理を含む)に関する計画
五.その他厚生労働省令で定める事項

 

2 病院又は診療所の管理者は、患者又はその家族の承諾を得て、前項の書面の交付に代えて、厚生労働省令で定めるところにより、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって厚生労働省令で定めるものにより提供することができる。

3 病院又は診療所の管理者は、患者を退院させるときは、退院後の療養に必要な保健医療サービス又は福祉サービスに関する事項を記載した書面の作成、交付及び適切な説明が行われるよう努めなければならない。

4 病院又は診療所の管理者は、第1項の書面の作成に当たっては、当該病院又は診療所に勤務する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の有する知見を十分に反映させるとともに、当該書面に記載された内容に基づき、これらの者による有機的な連携の下で入院中の医療が適切に提供されるよう努めなければならない。

5 病院又は診療所の管理者は、第3項の書面の作成に当たっては、当該患者の退院後の療養に必要な保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携が図られるよう努めなければならない。

[通知]入院基本料等の施設基準

入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制の基準は、「基本診療料の施設基準等」のほか、次のとおりとする。

1 入院診療計画の基準

(1)当該保険医療機関において、入院診療計画が策定され、説明が行われている。

(2)入院の際に、医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定し、患者に対し、別添6の別紙2又は別紙2の3を参考として、文書により病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等について、入院後7日以内に説明を行う。
ただし、高齢者医療確保法の規定による療養の給付を提供する場合の療養病棟における入院診療計画については、別添6の別紙2の2を参考にする。
なお、当該様式にかかわらず、入院中から退院後の生活がイメージできるような内容であり、年月日、経過、達成目標、日ごとの治療、処置、検査、活動・安静度、リハビリ、食事、清潔、排泄、特別な栄養管理の必要性の有無、教育・指導(栄養・服薬)・説明、退院後の治療計画、退院後の治療計画、退院後の療養上の留意点が電子カルテなどに組み込まれ、これらを活用し、患者に対し、文書により説明が行われている場合には、各保険医療機関が使用している様式で差し支えない。

(3)入院時に治療上の必要性から患者に対し、病名について情報提供し難い場合にあっては、可能な範囲において情報提供を行い、その旨を診療録に記載する。

(4)医師の病名等の説明に対して理解できないと認められる患者(例えば小児、意識障害患者)については、その家族等に対して行ってもよい。

(5)説明に用いた文書は、患者(説明に対して理解できないと認められる患者についてはその家族等)に交付するとともに、その写しを診療録に貼付するものとする。

(6)入院期間が通算される再入院の場合であっても、患者の病態により当初作成した入院診療計画書に変更等が必要な場合には、新たな入院診療計画書を作成し、説明を行う必要がある。

入院診療計画書の重要性

入院基本料の算定に厳しく条件化されていることや、医療を行ううえで最も重要な医療法においても指定されていることからもわかります。

入院診療計画書の作成漏れや渡し忘れなどの運用不備は、後々になっても大きな問題になりえます。

【入院診療計画書】指摘・指導事項について

  1. 入院診療計画書の様式の不備。
    ・「病棟(病室)」欄がない
    ・「主治医以外の担当者名」欄がない
    ・「特別な栄養管理の必要性」の有無について、記載欄がない
    ・「推定される入院期間」欄がない
  2. 入院診療計画書の記載上の不備。
    ・「主治医以外の担当者名」欄・「看護計画」欄の記載漏れ
    ・「手術内容及び日程」欄の記載漏れ
    ・「主治医以外の担当者名」欄の氏名が特定の者・特定の業種(病棟看護師長等)に限定されている
    ・「特別な栄養管理の必要性の有・無」の記載漏れ
    ・「看護計画」欄が画一的な記載になってる
  3. 入院診療計画書を医師のみで作成しており、医師、看護師、その他必要に応じ関係職種が共同して総合的な診療計画を策定していない
  4. 入院当初に作成した入院診療計画書に変更が生じた場合、新たに入院診療計画書を作成のうえ、患者に説明を行っていない。
  5. 入院診療計画書の記載内容(症状、治療計画、看護計画、特別な栄養管理の必要性等)に整合性・一貫性がない。

厚生局北海道より(H28.02.22)引用

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