POSに基づく診療の記録を問題指向型診療記録といい、POSの実践には不可欠なツールです。
目次
POSとは?
患者のもつ医学上の問題点を明確にし、その患者について最高のケアを目指して努力する一連の作業システム。
POSを開発した人は、Dr.ローレンス・L・ウィード。効果的な医療・教育・研究のために開発されました。
本来、ウィードは基礎医学者であったことから、基礎医学と臨床の診療記録を比較し、従来の臨床記録は
”不規則であり、組織だっておらず、しかも印象を書き散らしたものにすぎない”
と指摘し、診療録も基礎医学のように科学的に記載する必要があると訴えました。
その構造は、
①問題指向型診療記録(POMR)の作成
②POMRの監査
③記録の修正
の3つの要素がそれぞれの意味をもち、さらに互いに関連しあって患者のケアの質を高めることを目標にしています。
上記によると、POMRを作成された(①)のを監査(②)することで、患者に対し、科学的な根拠に基づく診療記録として修正(③)し、患者のケアの活かす仕組みを提供するものとなっています。
①問題指向型診療記録の作成
問題指向型診療記録は、①基礎データ・②問題リスト・③初期計画・④経過記録の4つの要素が含まれ、全体をまとめて考察を加えたものが退院時要約になります。
①基礎データ
初診時に記載し、主訴・患者の生活像・現病歴・既往歴・家族歴・理学所見・検査データなどの患者情報が含まれます。
②問題リスト
目次・索引に当たるリスト。診療記録の冒頭におきます。患者のもついくつかの問題を箇条書きにし、番号を付け記録します。この表を見ることによって、患者の問題の経過・解決状況がわかるようにまとめられるべきものです。
アクティブプロブレム:現在取り扱っている問題点
インアクティブプロブレム:すでに解決された問題や別の問題に変化した問題、あるいは将来問題となる可能性のある問題など、現在は問題とならない問題点
テンポラリープロブレム:診療経過中に発生した小さな問題点や一過性の問題点
③初期計画
ⅰ)診断上、また患者ケア上必要な計画
診断の確定、早期治療を行うために必要なデータ収集の計画。
1.診断を確定するための諸検査項目の選定、その他の基礎情報を集めるための計画
2.患者のケアや処置上必要な情報として、病気の経過状況の判断(評価)のための資料や治療に対する患者の反応、治療上の副作用を知るための情報を集める計画
ⅱ)治療計画
特別な処置、投薬による治療計画。
ⅲ)教育計画
各問題について、患者に対して行ったインフォームドコンセントの内容と病気の知識の認識を記載し、その治療について患者自らがどう参加すべきか、患者とその家族への教育計画を立てます。
④経過記録
問題点ごとに診断行為や治療行為を行った結果、各問題がどのように変化しているか、経過状況を記載します。
この記録は問題点ごとにSOAPの4項目に整理して記載。
S:患者が直接提供する主観的情報
O:医師や看護師が明らかにした客観的情報
A:医師や看護師の評価・診断・考察
P:患者の判断、治療方針、患者への教育計画
患者の経過中に現れるさまざまなデータや所見などを一見してわかるようにフローシートを利用して作成します。
退院時要約
退院時または転科時に書かれる要約で、問題点ごとにSOAPに分けて記載します。また、退院時の状況と退院後の外来指示や治療方針をまとめ、特に未解決な問題点について、重点的に記載します。この場合のSOAPは以下のとおりです。
S:主観的最終経過
O:客観的最終経過
A:評価、考察
P:退院後の治療方針
②・③POMRの監査と修正
POMRの内容を監査する際に、確認された不備や不足を補うことによって、完全な診療記録となります。監査は、一般的には指導医によって行われ、記載事項のもれや適切に問題点があげられているのか等について、評価が行われます。
こうした、POMRの不備・欠陥を修正することが医師の教育にもつながり、また患者に対するケアも改善されることになります。
まとめ
POSを開発した人はDr.ローレンス・L・ウィード(基礎医学者)
POSの構造はPOMRの作成、監査、修正。→作成された診療記録を監査することで、患者に対し、科学的な根拠に基づく診療記録として修正し、患者のケアに活かす仕組みを提供するものとなっています。