なんのために診療記録を毎日点検しなければならないんだろうと、ふと思ったので考えてみた。
点検していたら
完備に作成された診療記録は、有益な情報源につながる。
完備された診療記録をもとに、適正な疾病コーディングができれば、その後の情報分析や評価の質も高い成果を得ることができる。
結果、信頼性の高いデータになり、周囲から信頼される。
点検していなかったら
不備、不正確、不十分な診療記録は結果的に信憑性の低い情報となり不完全な情報活用につながる。
結果、信頼性の低いデータになり、周囲から信頼されない。
そうならないために不備な記録は、その発生源に戻し、訂正を依頼するなど情報の精度を確保することを日々心がける必要がある。
立ち入り調査される個別指導、監査等が行われた際に、記載が不十分であった事実が確認されたり、未記載が明らかになった場合には、不適切な算定(不当請求)を行ったとして、当該項目に対して過去に遡り保険請求した金額を自主返還しなければなりません。
診療記録とは?
診療記録:診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、X線写真、紹介状、退院時要約、そのほか診療の過程で患者の身体状況、病状、治療などについて作成、記録または保存された書類、画像などの記録をいう。
量的点検(形式審査)
1)診断が正しく記載されているか
・肺癌により右肺切除後の患者で右肺炎と記載されていれば、その診断名が正しいか?右肺がないのに右肺炎は見当つかない。担当医とコミュニケーションを取り、正しく診断名をつけなければならない。
・2typeDM確定診断なのに、1typeDMと記載されている。
・レセプト病名禁止。レセプト病名とは、保険適応外の診療行為や添付文書から外れた薬剤の使用を行った場合の保険請求で査定防止を理由に適応する傷病名を事務的に登録する際の病名を指す。
・確定した診断名を記載する。
・複数病名の場合には重要なものから記載する。
・新生物の場合には悪性・良性、(疑い)、部位を記載する。
・悪性新生物の場合は、慢性・急性の別を記載する。
・炎症疾患の場合は、慢性・急性の別を記載する。
・肺炎の場合は急性・非定型・ウイルス性・術後などのタイプ別を記載する。
2)記入が義務づけられているのに診療記録に記載もれがないか
・入院時診療計画書の必須項目などに記載もれや手術同意書の氏名欄記入もれがないか確認。
3)診療行為に付随した各種種類は揃っているか。
・各種種類とは、診断書・手術麻酔同意書・病状説明書・証明書などで、署名、捺印がないか確認する。署名、捺印がなければ証拠能力が低くなり、訴えられた病院は不利な状況に置かれることは確実なので、確認は必須。
4)署名、捺印、日付などはもれていないか。
・投薬指示簿、注射指示簿、検査指示簿などの署名・捺印・日付がもれていないか確認。
5)保険医療機関として
記載は鉛筆ではなく、ペンで記載すること。
修正は修正テープ、修正液使用禁止。修正前の記載内容がわかるように2本線で書く。
質的点検(内容審査)
1)診断名の妥当性、検査の妥当性などの項目をはじめ診療内容について点検
2)その診断に適した検査・治療が行われたか。
3)経過記録・処方・手術・退院時要約などが正しく記載され、診療行為を裏付ける内容を含んでいるか。
以上のような量的内容について点検・見直しを行い、もし記入上の不備・脱落事項があれば、記載者にそれを指摘し、完全な記録の完成を援助しなければならない。
まとめ
質的点検、量的点検は診療情報管理士にとって欠かさない業務の一つである。
点検する努力は決して無駄じゃない。
診療情報管理士は、診療記録に必要とされる医療法・医師法・療養担当規則・診療報酬請求制度などに規定された事項を十分把握し、診療記録を構成する諸記録の種類について理解する必要がある。