全国がん登録 Q&Aをまとめた。

目次

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届出病院などについて

Q1 すべての医療機関が対象となるのでしょうか。歯科や調剤薬局は対象ですか。

A1 対象となるのは病院および都道府県に指定された診療所です。

Q2 年間数件のがんの診断を行う診療所ですが、指定申請の必要はありますか。治療はほとんどすべて病院へ紹介を行っているため、全国がん登録に参加するとかえってややこしいのではないでしょうか。

A2 がん登録の精度向上のために、ぜひとも、ご協力をお願いします。特に、自施設で、診断~治療までを行う診療所では、登録の漏れが出てしまいますので、積極的な参加をよろしくお願いします。

Q3 県外に住所のある者、あるいは外国人の届出は必要ですか。

A3 患者の住所を問わず、自施設を受診した場合には届出・登録対象となります。外国人であっても、届出をお願いします。なお、住所をご記入の際は、市町村名のみならず、マンション、部屋番号など、できるだけ詳細な住所をご記入ください。

届出対象患者および腫瘍について

Q1 届出対象となっている境界悪性の腫瘍について、予後の悪い境界悪性はほかにもあるのになぜこれだけが登録対象なのですか。

A1 全国がん登録では、法律上の届出対象である「がん」の範囲は国際疾病分類第10版(ICD10)に基づいて決められていて、境界悪性腫瘍の中でも、ICD10に基づく死亡統計において悪性して取り扱われる腫瘍が登録対象となっています。

Q2 原発性のがんについて、下記の場合、届出マニュアル上、いずれも「初回の診断」にあたり、届出義務が生じるとい理解で正しいでしょうか。その場合A、B、Cからの届出対象情報は全国がん登録のシステム上どのように管理されるのでしょうか。例えば、C指定診療所からの届出情報などはB病院からの届出と同定されるのでしょうか。
A指定診療所で初回診断(画像診断ののちB病院紹介)→
B病院で病理学的な確定診断および抗がん剤治療→転院して、
C指定診療所で引き続き抗がん剤治療

A2 はい、ご理解のとおりです。全国がん登録システムに入力された届出情報は、必要があって削除する以外はすべて記録、保存されます。

Q3 病院が届出をした後、治療行為を引き継いだ指定診療所があらためて届け出る情報は制度上どのような意義を有するのでしょうか。治療行為とその結果の因果関係を研究するためでしょうか。

A3 がん登録推進法第6条第1項の「当該病院などにおける初回の診断が行われたとき」届け出なければならないという制度は、法第3条(基本理念)第1項の、広範な情報収集により、がんの罹患などの状況ができる限り正確に把握されるものでなければならない、を念頭に設計された仕組みです。
A指定診療所で初回診断(画像診断ののちB病院紹介)→B病院で病理学的な確定診断および抗がん剤治療→転院して、C指定診療所で引き続き抗がん剤治療
A病院が指定診療所でなく、B病院が届出違反をした場合、
C診療所による情報が、罹患把握のための唯一の情報になる場合も想定されます。また、当該がんに関する情報を集約した際に、C診療所の情報は反映されない可能性が高いですが、C指定診療所で引き続き「初回治療としての」抗がん剤治療の場合、C診療所は初回化学療法を行った病院などとして、集約情報に活用されます。C診療所が、自施設以前の病院などの届出状況を把握されている場合、自施設が重ねて届け出る意義は乏しいとお考えになるとは存じますが、通常は把握できないのではないでしょうか。そもそも、B病院が届出義務を果たさないのが悪いとお考えになるかもしれませんが、病院と協力診療所が助け合って、がん罹患などの全数把握を目指す、が、法の精神でありますことをご理解いただけますようお願いいたします。

Q4 指定診療所においてがんと仮に診断し、病院へ紹介後、確定診断および治療に至る場合、届出対象となりますか。

A4 「がん」であるかないかの診断も含めて他施設に紹介した場合、指定診療所において届出は不要です。一方、指定診療所において「がん」と診断し、詳細診断や治療のために他施設に紹介した場合、指定診療所においても届出対象です。

Q5 病院でのがん治療後、指定診療所においてフォローを行う場合、当該施設における初回治療にあたるとして届出対象となるでしょうか。

A5 病院でのがん治療後のフォローを行うために指定診療所を受診した患者の腫瘍が、当該指定診療所にとって初診で、診断および/または治療などの対象となった腫瘍である場合、届出対象です。

Q6 他院でがん治療している場合は対象外、がん治療をどこでもしていない場合を経過観察とみなすのでしょうか。

A6 他院でがん治療を行っており、自施設の診療内容が当該がんとはまったく無関係である場合、届出は必要ありません。また、「経過観察」とは、がん治療をどこでもしていない場合ではなく、自施設が、当該腫瘍に対して計画する治療方針の1つです。

Q7 がんに対する直接的な手術、化学療法などはしないにせよ、QOLの低下を防ぐために点滴、注射などを行う場合は治療と判断し、対象となるのでしょうか。

A7 当該施設が、当該患者の当該腫瘍について、診断および/または治療などの対象としている場合は、届出の必要な患者と考えられます。

Q8 指定診療所においてフォロー中のがん患者の死亡診断をした場合、届出は必要でしょうか。

A8 病院でのがん治療後、指定診療所においてフォロー中の死亡の場合、初診の時点で届出対象であるため、死亡のタイミングでの重ねての届出は不要です。

Q9 「がんの診断・治療」を目的の受診ではなく、他院でがんの診断がされており、現病歴・既往歴にがんがある患者について、届出は不要ですか。

A9 当該施設で「がんの診断・治療」を行っていないので、届出の必要な患者ではありません。

Q10 精神疾患治療のために入院されたが、がんも併発しており疼痛軽減の薬を処方した場合などはがんの治療とみなし、届出の必要がありますか。

A10 この場合、がん登録推進法上「がんの診断・治療」を行っているので、届出の必要な患者に該当します。

Q11 当院入院中で、がんの診断や治療は他院で行うという場合は、診断・治療を行う他院で届出を行いますか。それとも入院している当院で届出を行うのでしょうか。

A11 当該施設では「がんの診断・治療」を行っていないので、届出の必要な患者ではありません。

Q12 緩和ケア病棟へ入院した患者も対象となりますか。また、他施設で手術後、リハビリテーションやターミナルケアを目的として紹介された場合、自施設から届出をする必要はありますか。

A12 入院・外来を問わず、自施設において、当該腫瘍について初診し、診断および/または治療などの対象となった腫瘍は届出の対象です。緩和ケア病棟やリハビリテーション病院という施設の特色で、届出の必要な患者か否かは決まりません。

Q13 がんの疑いで、病院やほかの診療所へ紹介した場合、自施設は届出の必要がありますか。

A13 病理診断以外の方法で「がん」と診断し、詳細診断や治療のために他施設に紹介した場合、貴院で「がん」と診断しているので、届出が必要です。必ずしも病理学的な確定診断を要せず、画像診断、血液検査、尿検査、肉眼的検査、および臨床検査を含みます。一方、「がん」であるかないかの診断も含めて他施設に紹介した場合、届出は不要です。

Q14 施設から検査を依頼され、自施設に検査のみで来院した患者ががんである場合、カルテに「がん」という病名がつきますが、届出は必要でしょうか。

A14 届出マニュアルでは診断根拠の説明において 依頼検査の結果は、検査を依頼した側の施設の結果に含めるとしておりますが、これは、依頼検査を「委託業務」的にとらえてのことで、全国がん登録の届出を要しません。ただし、Qのように、他施設から、検査を依頼された場合も、自施設で検査をし、当該がんについて初めて「がん」と診断した場合、届出が必要です。
他施設から、検査を依頼された場合も、自施設で検査をし、当該がんについて初めて「がん」と診断した場合、届出が必要です。

Q15 セカンドオピニオンの場合、照会元へ帰すのが通例であり、この場合も院内病名が「がん」とつきますが、届出は必要ですか。「経過観察」とするのでしょうか。

A15 セカンドオピニオンは「意見」であり、診療に含めない取り扱いとなる場合があります。その場合、届出不要です。セカンドオピニオンを「診療」と取り扱う場合、項目「治療施設」は、経過観察ではなく、「8.その他」としてください。

Q16 同じ臓器において、再発か、新しく発生(多中心など)したか不明な場合は届出の必要がありますか。

A16 同じ臓器において2つ以上の異なる組織形態のがんが独立して存在する場合、多重がんとして届出が必要です。以前と同じ臓器に発生したがんについて、病理診断前で再発か、新しく発生した組織形態の異なるがんか不明な場合、 届出をお願いします。

Q17 一人の患者さんに2つのがんが見つかりました。一件の届出に2つのがんの情報を合わせて記入すればよいですか。

A17 まず、2つのがんが、再発・転移でないか確認してください。独立した別のがんであれば、一腫瘍につき一件の届出を別々にお願いします。

Q18 当医療機関には転移巣の治療で来院しました。診断名(原発部位名)欄にはどのように記入しますか。

A18 原発部位が判明していれば「原発部位」を、不明確な場合は「原発不明」とご記入ください。

Q19 診断名欄に「側性」を記入する欄があります。例えば肺の両側にがんがある場合は、「両側」をチェックするのですか。

A19 「両側」は、卵巣・腎芽腫・網膜芽腫の場合にのみ使用してください。

Q20 紹介状に「胸水貯留の原因として肺腺がんと診断されております。」の記載のみで、病名の欄に肺腺がんと記載あり。患者さんが積極的治療を望まなかったため、がん治療は行わず、胸水貯留の急性期治療が終わった状態で、長期臥床によるADL改善の継続のため転院してきた場合、届出対象となるのでしょうか。対象となる場合、「経過観察」となるのか、対症療法もがん治療になるのでしょうか。

A20 自施設が、当該患者の当該腫瘍について、診断および/または治療などの対象としている場合は、届出の必要な患者と考えられます。自施設で、長期臥床によるADL改善のみの診断および/または治療などの対象としている場合、届出不要と考えられます。

Q21 外来で、他院からのがんパスに沿って定期的に診察、採血するのみで、治療を一切行っていない場合はどう判断すればよろしいですか。

A21 他院からのがんパスに沿って定期的に診察、採血という行為が、依頼検査と同等で、自施設での診断・治療(経過観察を含む)の意思決定がまったくない状況の場合、届出の必要な患者ではないと考えられます。

Q22 当病院では放射線治療のみ行いましたが、前医療機関で手術を受けています。治療法欄の「手術」も「有」と記入する必要がありますか。

A22 貴院で診断時には、他施設での手術のみを初回治療としており、また術後の化学療法であることからも、2が適切です。

Q23 回復期リハビリテーション病棟に入院され、入院中にがん治療を行っている病院を定期的に受診し、投薬・治療を受けている場合、全身状態を改善する治療は、脳卒中だけでなく、がんにも影響を及ぼすと思われますが、対象となるのでしょうか。

A23 当該がん患者の当該腫瘍に対して、診断・治療(経過観察を含む)の意思決定がまったくない場合、その病院にとって届出は必要ありません。ただし、がん治療を行っている病院などの指示によるものとしても、当該患者の当該腫瘍に対して「全身状態を改善する治療」を自施設で行っている場合、依頼検査とは異なり、自施設の意思に基づく診療行為として、届出が必要です。

Q24 2016.1.1より前に、自施設でがん診療を受けていた患者は、2016.1.1以降に同じがんで受診した場合には、届出不要ですか。新規というのはどの時点から考えるのでしょうか。

A24 法的には、当該病院などにおける初回の診断日が2016.1.1を起点とします。診断施設が「1.自施設」の場合は自施設診断日を診断日、「2.他施設」の場合は当該腫瘍初診日を診断日、となりますが、それぞれ2016.1.1以後の症例が届出対象です。質問のケースの場合、診断施設が自施設でも他施設でも、自施設の初回の診断日が2016.1.1より前なので届出対象にあたりません。

Q25 診断紹介後、自施設が初発治療施設となった場合は、修正届が必要でしょうか。それとも2回目の届出が必要でしょうか。

A25 どちらも不要です。修正届出は、がんの発生の真偽に関わり、当該施設が修正届出をしなければ、誤った登録がなされてしまう場合に限るとお考えください。

Q26 当院診断→他施設へ手術紹介→当院へ化学療法目的で 逆紹介の場合、1 自施設で初回治療を開始、2 自施設で初回治療をせず、他施設に紹介、のどちらを選択すべきでしょうか。

A26 貴院で診断時には、他施設での手術のみを初回治療としており、また術後の化学療法であることからも、2が適切です。

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届出方法について

Q1 届出情報の提出期限はあるのでしょうか。間に合わなかった場合、どうなりますか。

A1 診断日の翌年12月31日が締切りとなります(省令第10条)。締切りを過ぎると、法第7条に基づいて都道府県から勧告がされ、勧告にしたがわないとその旨公表をされる可能性があります。ただし、間に合わなかった場合も、有用な情報としてデータベースに登録されますので届出をお願いいたします。

Q2 届出マニュアル(ダウンロード版)7ページの届出情報の作成時期で、「初回の治療が届出の推奨時期、期間を超えて継続している場合」の、推奨時期、期間とは「診断年から翌年末」という認識でよろしいですか。

A2 そのとおりです。

Q3 届出の頻度や時期は、決まっていますか。

A3 政令によって診断日翌年末が締切りです。頻度や時期は、法令での決まりはありませんが、届出マニュアルp.8を参照してください。

Q4 「自施設で初回治療をせず、他施設を紹介した場合は他施設に紹介時」とありますが、実際は紹介後、緩和ケアも含めて、治療のために戻ってくる場合がありますので、紹介の結果、自施設での初回治療の有無が確定してから作成する、でよいでしょうか。

A4 「自施設で初回治療をせず、他施設を紹介した場合は他施設に紹介時」までが、届出対象となる当該病院などにおける「初回の診断(診断から治療)」の範囲とお考えください。

Q5 電子届出票(PDFファイル)は随時、院内がん登録情報からの届出用CSVファイルは年1回の提出と決められていますか。

A5 届出回数に関する法令上の制限はございません。届出マニュアルには、合理的な運用上のお願いや目安を記載させていただきました。院内がん登録の場合、院内がん登録の全国集計にデータを提出後のチェック済み情報を、全国がん登録に提出していただく想定です。

Q6 ICD-O-3に収載されている局在コードが電子届出票(PDFファイル)の選択肢にないがどうすればよいですか。

A6 選択肢の中から最も近いものを選んだ上で、備考欄に詳細な局在、形態を記入してください。
(例)
口蓋扁桃(C09.9)(頭頚部→口腔→口蓋扁桃の記載でよいか。) ⇒ 「中咽頭」を選択し、備考欄に口蓋扁桃と記載してください。
梨状陥凹 ⇒ 「下咽頭」を選択肢、備考欄に梨状陥凹と記載してください。
SSM:表在拡大型黒色腫 M8743/39 ⇒ 皮膚であれば、皮膚→詳細部位→悪性黒色腫を選択肢、備考欄に表在拡大型黒色腫と記載してください。

Q7 届出マニュアル(ダウンロード版)11ページの「届出の方法」では、具体的な方法は「都道府県が通知する」とあります。これは都道府県ごとに具体的な方法を決めるという認識でよろしいですか。また、推奨される届出の方法はありますか。

A7 がん登録などの推進に関する法律では、「全ての病院又は指定された診療所は、届出対象情報を当該病院などの所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と定めており、届出までが病院の義務となります。都道府県では、届出の具体的な方法を決定し、届出を行う病院などへ周知することになります。厚生労働省からは、都道府県へ届出情報および移送の電子化を推進する旨が連絡されています。

Q8 病院で届出票様式を印刷して紙上に記載したものを都道府県がん登録室へ送るという運用はしてもよいでしょうか。

A8 届出ファイルは、電子的に提出してください。

Q9 OCR届出票について増刷予定なしとのことでしたが、複写での利用も駄目でしょうか。

A9 OCR届出票を複写してご利用いただくことは可能ですが、全国に配布したOCR届出票には全国で一意の連番をあらかじめ振っており、全国がん登録システムはその連番で票認識をする仕様になっているため、複写してご利用になると、最初に利用された1枚のみOCR読み取り可能で、それ以外は都道府県が手入力でご対応いただくことになり、実務が非常に非効率になります。また、厚生労働省は、届出専用オンラインの整備を含め、数年以内に届出の完全電子化の意向です。

Q10 医療機関からの届出についてUSBで送付する場合、どの程度の容量のUSBを準備すればよろしいでしょうか。

A10 電子届出票PDFファイルは、含まれる10枚すべてに記入した場合でも、約1MBの容量です。また、CSVファイルを添付した場合でも2MBを超えない程度のサイズになりますので、2GBのUSBメモリで十分と考えられます。

がん情報サービスより引用

 

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